フランスに見る少子化対策 ~ 第2話 あなたのメチエ(職業)は何ですか?

フランスに滞在することになった日本人の既婚女性達からよくこんな話を聞く;

フランスに住み始めて、少しずつフランス人と知り合う機会ができると、まず最初に聞かれるのが、「Qu'est-ce que vous faites? (ケスクブフェット?)」。

直訳すると「あなたは何をしているのですか?」だが、初対面の会話でフランス人からこれを聞かれたら「あなたのご職業は何ですか?」を意味する。
この時、「専業主婦です」とか、「結婚する前は会社勤めしていましたけど、今は働いていません」などと答えると
「あ、そうですか」と、そこで話がピタッと途切れるのが一つのパターン。
もう一つは、「どーして働かないの? 家の中に閉じこもって気が変にならない? 社会との関わりがなくて辛くない? 職探しはしてるの?」
というような趣旨のことを深刻かつ心配そうに聞かれるパターンである。

結婚して子供が出来た以上、よほどのことがない限り、仕事を辞めて子育てに専念するのが当たり前というか、よしとされている文化の国から来た者にとっては非常に余計なお世話な質問である。
日本では、小さな子供のいる女性に「どうして働かないの?」なんてナンセンスな質問は投げかけないだろう。

しかしこの国では「働かない女性」が圧倒的に少数派なので、「子育てに専念すること」が働かないことの理由として理解されない。
日本から来た専業主婦の女性はそこでちょっと肩身の狭い気持ちになるという。


- あなたのメチエ(職業)は何ですか?-


こういう感覚は経済的事情だけではなく、今のフランスの職業観にも由来しているのかもしれない。
前記の「Qu'est-ce que vous faites? (ケスクブフェット?)」=「あなたのご職業は何ですか?」の質問に対しては、
日本人の会社員だったら、「商社に勤めております」あるいは「衣料メーカーに勤めております」というような答え方をするのが普通だろう。
しかしここでは「私は営業をやってます」とか、「経理をやってます」とか、その会社で何をやっているかを答えなくてはならない。
勤めている会社自体の名前や業種はあくまでも補足情報にすぎないのだ。

つまり、ここで聞かれているのは、「あなたの職業(Métierメチエ)=あなたのスペシャリティ」であって「お勤め先の会社のこと」ではない。
イメージとしては、あなたは「何屋」ですか? 「営業屋さんですか?」「経理屋さんですか?」と聞いているのに近いのである。

この「あなたは何屋ですか?」という質問は、何か改まったことをするとき、例えば結婚するとき、不動産を売買したり賃貸するときに必ず発せられ、それに対する答えは口答で読み上げられ、書面に記録される。

会社勤めか否かに拘わらず、職業をその人の属性としてとらえる。
そしてその属性は、性別とか国籍のように、結婚しているとか、子供がいるとかの事実に全く左右されない、その人のアイデンティティ構成する大事な要素の一つと看做されているのだ。

(つづきます)

2008年04月10日