カルチェ・ラタンのお昼ごはんに強い味方 ~ “Au vieux colombier”
フランスは物価が高い。フランスの中でもパリは特に物価が高い。パリの中でも一際シックな街、カルチェ・ラタンのまともなレストランといったら、それはもう押して知るべし、ということで、この界隈で適正価格で美味しいものを食べさせてくれるレストランを見付けるのはなかなか至難の業である。
ところが、そんな物価高の波にも厳然と立ち向かい、昔からの味と質を守りつつ、良心的な値段でこの近辺で働く人達のお昼ごはんを支えている店がある。
お店の名前は“Au vieux colombier”。
一見外見は地味だが、Renne通りとAu vieux colombier通りの交差点の角という、とても分かりやすい場所にある。
店の中は決して広くないが、鏡とガラスが張り巡らされた内装、年季の入ったカウンターに、パリの古きよき時代のブラッスリーの風情が感じられる。
夜も営業するが、まずはランチを試したい。目玉は日替わりの「本日のお料理」である。
本日のお料理 ~ 子羊の腿肉ステーキとグラタン・ドフィノワ。これで11ユーロ。
豪快で彩りのよい盛り付けが食欲をそそる。味付け、食べ応えともに外食に有りがちな味気なさがなくて、フランスの家庭料理のような優しさと安心感がある。
なぜ、こんな超都会にあるレストランの料理に「家庭」を感じるのだろうか?
デリケートな塩加減とか、素材からでる自然な旨味を最大限生かしたごくシンプルな味付けとか理由は色々あるけれど、やはり他のレストランと一線を画しているのは「付け合せ」に対するまじめさだと思っている。
「お肉とお野菜、バランスよく食べなさいね」という家庭のお母さんのメッセージみたいなものを、ここの付け合せに感じる客は私だけではないだろう。
それは、メインのお肉やお魚の横にさりげなく添えられているサラダだったり、ジャガイモを使ったグラタンだったりするけれど、脇役でありながら素材、調理双方の点で絶対に手を抜いていない。 サラダは作りたてのドレッシングで和えたばかり。グラタンのジャガイモはホクホクした歯ごたえを残しつつホワイトソースの旨味をしっかり吸いこんでいてこれが絶品である。
最近、流行のレストランといわれるところでも、付け合せはお飾り程度のものが殆ど。本格的なお値段のわりにはあまりにもお粗末なので、作り手も付け合せまで食べてもらおうと思っていないのでは?と感じることすらある。フランスでは、他の品目にもれず野菜・果物の値段も容赦なく上がっているので、利益率を無視できないレストラン側のことを考えると、それも仕方の無いことなのかもしれない。
そんな中、こういう地味な脇役に、新鮮な野菜をたくさん使って、主役のお肉と同じくらいまじめな「盛り」と味付けをする、そういうお店もまだ存在するのである。
移り変わりの激しいパリの飲食店。
この店がずっと長く続いている秘訣は、こういうシェフの心意気にあるのではないだろうか。
2008年03月27日


