2011年11月19日

笑える

師も走る12月を目前に、今回は「笑える」をテーマにしたいと思います。

いつもテレビ番組はたいてい録画してコマーシャルをとばして見ているのですが、とばせないコマーシャルがあります。かなり前からシリーズで出ているE Trade のコマーシャルは、株の取引がインターネットで簡単にできるというので、赤ちゃんが主人公になっています。あんなにたくさんのシチュエーションをどう思いつくのか、小さい子供のあんな表情をいったいどうやって撮っているのか、何度見ても、にやりとします。https://us.etrade.com/e/t/jumppage/viewjumppage?PageName=etrade_super_tv_ads

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それから、コメディアンのEddie Izzard。イギリスのコメディアンで俳優でもあり、Oceans 12や13にも出ています。Dressed to Killという、サンフランシスコでの公演がDVDになっています。女装趣味を公表している人で、Dressed to Killではかなりすごい容姿で現れます。ふだんあまりコメディは見ないほうですが、Dressed to Killはもう何度となく見ているにも関わらず飽きません。YouTubeでもいくつか出ていますのでお試しください。http://www.youtube.com/results?search_query=dressed+to+kill+eddie+izzard&search_type=&aq=f。Ich Bin Ein Berlinerは、ケネディ大統領がベルリンで演説したときの話。Do you have a flag? は、大国がどうやって植民地を手に入れていったか。Learning French は学校で習うフランス語がいかに実地で役に立たないか。Cake or death は中世に起こったスペインの異端審問。歴史や言語、動物といった、ちょっと違った内容を扱っているのも面白いと思います。Izzardが出ているAll the Queen’s Men (エニグマ争奪)は日本でも出ているようです。この映画、興行的には失敗だったというのですが、わたしは思い切り笑いました。

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ローリー・ノタロ著の「There's a (Slight) Chance I Might Be Going to Hell: A Novel of Sewer Pipes, Pageant Queens, and Big Trouble」。どうしたらこんなにうまい題名を思いつくのかとうならせます。長いフライトの最中に読み出して、ぎっしりと席がうまった飛行機の中で、思わず声を出して笑ってしまいました。主人公メイは、やっと終身地位保証に結びつきそうな教授職を得た夫について、ワシントン州に引っ越します。家族や友達、レポーターとしての仕事をあとにして引っ越した新しい街で、メイの友達獲得作戦は失敗続き。下水管が主要産業であるその街にはSewer Pipe Queens Pageantというコンテストがあることを知り、それに挑戦するメイをめぐって、夫の上司である学部長のいじわるな妻や、反社会をつらぬいてめったに家も出ないルビーなど、ユニークな登場人物が光ります。最後は少し「へ?」という感じではありますが、描写が絶妙で、途中、何度も笑えます。

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スーザン・エリザベス・フィリップス著の「Match Me If You Can」。優秀な兄弟がすべて立派な職業についている中自分だけぱっとしないアナベルは、祖母の結婚紹介所を引き継ぐことになります。そのアナベルの前に、35歳までに絶対トロフィーワイフを見つけると固く心に決めているスーパーリッチのヒースが現れます。貧しい家庭で育ち、自分の力と努力だけで成功をおさめたヒースと、恵まれた家庭で育ったみそっかすのアナベル。ふたりのまわりに起こる出来事はかなりドタバタで現実ばなれしているとはいえ、あっという間に読ませて、無邪気に楽しくて、Delicious という形容詞がぴったり。普段ロマンチックコメディは読まないのですが、これは楽しかった。

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東北関東大震災が今も人々の毎日に影を落としている今年は、身の回りでも悲しいことや心配事が多い年でした。心配したり駆け回ったりする一方、思い切り笑ったり、泣いたりすることの大切さ、それが心に与えてくれる栄養分がよくわかって、今回は笑いを少しおわけすることができればと思いました。

2011年09月25日

このあたりの大工さん事情

キッチンの改装に続いて、キッチンのすぐ横から外に出てバーベキューができるようにデッキを建てようと話し合ったのは3年前。「もっとも頻繁に日曜大工で建てられて、もっとも壊れて怪我にいたる可能性が高い」と言われているデッキを、最初は大工さんに建ててもらおうと思っていた。折りしも景気が悪化していて、大工さんをさがすのもそんなに大変ではないだろうとたかをくくり、最初は消費者の批評サイトで見つけた大工さん2人に連絡した。45平方メートルのデッキの価格が一人は3万ドル、もう一人は1万ドルを切るというものすごい差で、1万ドルの大工さんに頼むことにした。しばらくして図面が届くと、基礎のコンクリート柱の間隔が州の規定を超えていた。それを指摘したらそれっきり連絡がこなかった。こうして1年目の夏は終わり、2年目はデッキ専門の建築屋さんを中心に連絡を取った。ほとんどみんな10月までぎっしり詰まっているという。その中で1万5千ドルで9月には着工できるという業者さんに決めた。そして9月。「急な仕事が入って10月中旬になります」と言われた。10月には「思ったより大きな仕事になってしまったけれど、なんとか11月初めにはかかれます」ということになり、結局は「来年3月に今年の価格のままやります」ということで年を越した。長く、ふだんより雪の多かった冬がやっと終わって4月に「これからうかがいます」と連絡があった。「木材の価格が驚異的にあがったので、去年の価格ではできません」ということで、それならと24平方メートルの単なる四角いデッキで見積もりを頼んだら、それでも2万ドルを超えるという。去年45平方メートルのデッキが1万5千ドルだったのに、たった1年で半分近くのデッキがそれより高くなるのかと言ったら、「去年1万5千ドルなんて言っていない」と言われた。この業者からの連絡と見積もりはすべて電話で、何も書類になって残っていないことに、ここで気がついた。

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今年こそはと思っていたので、知り合い何人もに聞いて4-5人の大工さんに電話したけれども、下見に現れても見積もりが来ない、電話をしても連絡してくれないという状態が続いて、ついに「やっぱり自分たちで建てるしかない」ということになった。夫は日曜大工が大好きで、しかも器用な人だけれども、わたしはほとんど経験がない。自分たちで建てるといっても、週末しか時間が取れない。それでも夫は果敢に7月の熱さのまっただ中、深さ1.2メートルの基礎を7つ掘り、コンクリートを流し込んで基礎を造った。その基礎はちゃんと街の建築課の検査も通り、コンクリートの上に基礎柱を建て、大きなねじをいくつも使って家にデッキを固定するための横木を固定し、四角く基本になる梁を渡す。低いところで1メートル、高いところでは2メートル近い柱がすべてちゃんと垂直で、長さ5メートルの横木や梁はすべて水平であることを確認しながら、建てていくのは思ったよりずっと大変。夫は少しの妥協も許さず、これだけで週末2回がつぶれた。それからデッキの下に雑草が生えないよう、水はけもいいようにと砂利をひくのに丸1日 (砂利の下に雑草よけの黒いシートを敷くという念の入りよう)、水平であることと間隔を何度も確認しながら根太を半分だけ渡し終えてまた週末が終わる。そして次の週末は根太を完了。今週は階段を夫一人で建てている。デッキ材を敷くところまではどうしても完了しないといけないけれど、手すりまではとても今年は終わらないだろう。

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手馴れていて、落ち着いてきちんと作業をする夫に対し、わたしは力が弱いだけでなく、始終打ち身や切り傷、擦り傷を作っては家の中に走るというのを繰り返している。それでも、だんだん形ができてくるのを見ると、日曜大工の醍醐味が少し判ったような気がする。そして、コーヒーを持って週末の朝、デッキに出られる日がとても楽しみなのだ。

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2011年08月28日

マサチューセッツ、左派の逆襲

民主党が圧倒的に強いマサチューセッツで、故ケネディ上院議員の議席を共和党の新人スコット・ブラウンが獲得してから2年近く、衝撃的な過去を公にする自伝もこの春ベストセラーになり、来年の選挙でも当選が確実視されていた。そこへエリザベス・ウォーレンが民主党から上院議員戦に出るというニュースが流れた。

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ハーバード大学で契約法、破産法、商法を教えるエリザベス・ウォーレンは、大手銀行に貸し付けられたTARP資金を監視するためにオバマ政権が設けた特別パネル (Congressional Oversight Panel) で議長を務めた。ウォール街の金融大手から消費者を守るという立場から消費者金融保護局の設立を呼びかけ、保護局は設立されたものの、自由経済と企業保護を信条とする共和党から大々的な反発を呼び、局長の座につくことはなかった。ウォーレン在任中に、オバマ政権はクレジットカード会社から消費者を守る法律を実施し、その結果、既存のクレジットカード未払い金に対して新規の高い金利を適用しない、支払い日までの期間延長 (遅延金が発生するまでの期間延長)、カード利用規則変更が通知されてからそれが実施されるまでの期間を延長して変更内容に依存がある場合は既存の規則にのっとって未払い金を支払ってカードを解約できるなど、クレジットカード会社は大幅な規定変更を余儀なくされた。

ウォーレンはオクラホマ州で生まれ、19歳で結婚。出産後も大学を続け、ラトガース大学で法律大学院を卒業した。1992年からハーバードで教鞭をとっており、2009年には優秀な教授に送られる賞を史上初めて2度受賞している。今も頻繁に引用される、医療費用と個人破産に関する論文 (個人破産の半数が医療費負担によるもので、しかもその75%は医療保険に入っていたという研究結果が出ている) はウォーレンが共著したものである。

ティーパーティーに人気のミシェル・バックマンやセーラ・ペーリンに対して、エリザベス・ウォーレンはリベラルの間で大変な人気を誇る。コメディセントラル局のThe Daily Show、HBO局のReal Time with Bill Maherといったニュースや討論番組、Michael Moore監督の映画Capitalismにも出演し、歯に衣を着せぬ発言を繰り返す。稼ぎ手が一人であった50年、60年代に比べ、共稼ぎにも関わらず現在の家庭の平均生活レベルが落ちていることを指摘し、大企業を守るのではなく、中流階級を強化しないことにはアメリカの復興はありえないと訴える。

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ウォーレンが立候補するための準備を始めたというニュースが発表されたばかりで、実際に選挙戦に参加するかどうかはまだ不確定ではあるけれども、故ケネディ上院議員が47年間守った民主党の議席奪回をめぐる選挙戦は全国的にも大きな注目を集めることになると思われる。共和党員だけでなく、中間派にも人気の高いスコット・ブラウンを、かなり左派といえるウォーレンが破るかどうか、個人的にも興味がある。

2011年07月24日

カルチャーショック

夫はアルメニア系の両親のもと、イギリスで産まれている。アルメニアは、世界で最初にキリスト教を国教とした国だそうである。うちには義母がくれた十字架と日本人の友達がくれた小さな観音像があり、それに別に違和感もなかった。

ある日、フランス人の友達が、日本人の母親を持つ子供ふたりともカトリック教会で洗礼を受けさせたという話をした。「ちゃんと洗礼を受けていないと天国に行けないからね」とまじめな顔でいう。クリスマスだろうがイースターだろうが、教会にはいっさい行かないのにである。「ってことはわたしは洗礼を受けてないから天国にいけないっていうこと?」と聞いたら、「そりゃいけないだろう」と我が夫ともどもまじめな顔で言うのだ。これには驚いた。結婚するとき、アメリカで無宗教の式を挙げるというわたしと、イギリスでアルメニア正教会でという夫は、かなり感情的な話し合いを繰り返した。結局、アメリカでアルメニア正教会で式をということで妥協した。「教会で式を挙げない限り、うちの両親は絶対に結婚を認めない」と夫は言ったのだ。そして、去年、義弟が英国正教会で結婚式を挙げたとき、「教会で式をあげたんだから、それはそれでしかたないわね」と言った義母の発言でそれは裏づけされたのだ。

わたしは神棚と仏壇がある家で育った。祖母は朝晩、必ずお経を唱えていたけれども、宗教をあまり意識したことがなかった。アメリカに住むようになって、ブッシュが2度大統領選に勝った際に大きな要因になったキリスト教保守派の存在や、ここ2-3年目立ってきた無宗教派の発言に出会って、改めて自分の宗教観について考えさせられた。一時期恐ろしいほどの力を見せていたキリスト教保守派は少し静かになり、このところ無宗教派の声が聞かれるようになっている。長くお気に入りのイギリスのコメディアン、エディ・イザードの久々のアメリカツアーも「イギリスから飛行機で来たけど、空の上に天国なんてなかったし、神様もいなかった」というのでオープンした。超リベラルで知られるアメリカの人気コメディアン、ビル・マーは去年 Religulous というドキュメンタリーを作り、宗教全体を攻撃している。いわく、「処女受胎など、常識で考えられないことをふつうに信じてしまうといった、人間の知性を危うくするところがその恐ろしさである」、「古くは十字軍、今はイスラム教徒の過激派が宗教を盾に戦争、人殺しをしている」

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オバマ大統領は公約どおり、同性愛者を軍隊で受け入れるという法案を通した。マサチューセッツ州を初めとする7つの州で同性愛者同士の結婚が合法化されるという動きがある一方で、キリスト教保守派は同性愛は聖書で厳しく禁じられていると言い張り、結婚は男女間で行われるものであり、同性間の結婚はモラルを破壊する社会の大敵であると主張する。これは選挙戦でも必ず候補者間で違いが指摘される重要点になっている。第二次大戦後、宗教と政治の分離を明確にせざるを得なかった日本で育ったわたしには、政治が宗教的な信条に基づいて論議されるというのは考えられないことであった (その宗教と政治の完全隔離を日本に強要したのはアメリカであった)。価値観というのは宗教に少なからず影響を受けているもので、自分の判断の基準を分析してみると、そこに仏教や神道があるのを否定できない。そういった意味で自分は無宗教だとは言えないし、日本の政治が宗教と完全に一線を画したところで起こっているとも言い切れないとは思う。でも、自分の中では宗教が生活の一部、価値観として大々的に前面に出てくることもないだろうと思う。そういうことだから、ビル・マーが宗教を徹底的に攻撃しているのを聞くと、改めて、やっぱり宗教というものの存在がアメリカではいかに大きいかを感じさせられるのだ。

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2011年06月26日

Food Revolution

アメリカの学校給食のひどさは、初めて来た20年近く前からほとんど変わっていないらしい。来る日も来る日もピザやハンバーガーやホットドッグ並ぶメニューをホストファミリーの家で見て、びっくりした。子供たちが食べるランチの内容を憂いて、メニューを毎日ブログで公表していた高校教師が停職処分になったというニュースも去年あった。

子供の5人にひとりは肥満児、国民の8.3%が糖尿病というアメリカ。そういう状況の中、学校給食に改革を起こそうとFood Revolutionというリアリティ番組が現れた。イギリスの学校給食ですでに大きな影響を与えたジェイミー・オリバーというシェフが、去年のウェスト・バージニア州に続き、今年はロサンジェルスで学校給食の改革を試みた。高校のカフェテリアで、朝食と昼食の内容をチェックする。朝食はペストリーなど、すべて袋詰めのものばかり。昼食もファストフード中心で、学校では暖めるだけになっている。この学校はロサンジェルスのまっただ中にあって、マイノリティ、中南米系が圧倒的である。低賃金で両親がいくつもの仕事をかけもちする家庭で、家でも日常的にファストフードを食べて育っている。肥満が多いし、家族にも糖尿病が多くて、自分もいつ糖尿病になるかとおびえているのだと、生徒たちは言う。

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ジェイミー・オリバーは、肥満や糖尿病といった問題を多方面からとらえる。食物や栄養に関する授業がまったくないと知り、生徒に自分たちが食べている食物の現状を教える。学校給食で使われてるひき肉は、従来ドッグフードに使われていた、ほとんど肉がついてない部位にアンモニアなどを混ぜて攪拌し、引き離した肉からできているといい、そのやり方を実際に見せる。アンモニアは処理に使われるのみで、添加物ではないため、FDAでも許可されてしまうというのだ。また、自分の摂取したカロリーを消費するのに、どのくらいの運動が必要かを教えるのには、バックパックにウェイトを入れて、学校の陸上トラックを何週も歩かせる。学校のある地区のダイナーで、どこから来たかわからない、つまり学校給食で使われているのと同様のひき肉を使ったハンバーガーを売らないよう、オーナーを説得する。低価格を売り物にするダイナーのオーナーは、原料のひき肉の価格が少しでも上がるのに大きな抵抗を示す。「国民の肥満、糖尿病という問題に、このダイナーは直接貢献しているんだ、それでいいのか」と何週間もかけてオーナーを説得する。同じく近くに住む、毎日ファストフードで外食している父子家庭を訪問して、料理をすることが実はそんなに大変なことじゃないと、1週間ほどかけて料理を教える。数週間後、父親と息子ふたりの家庭で、毎日料理する生活が定着し、体重が減っただけでなく、体調がぐんとよくなったと家族みんなが話す。

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学校給食は規定に基づいて計画運営されており、外部者はいっさい入れないという教育委員会に、最後は学校を訪れることすら禁止されてしまう。それならと、自分のキッチンを学校の前に移して、授業後、生徒たちが料理を習えるようにする。15年前、すらりとした金髪のかわいいオリバーは、Naked Chef という料理番組を持つ、ホットなシェフだった。結婚して4人の子供を持ち、かなり体重が増えてしまったオリバーが今、食べるものがいかに健康に密接につながっているか、学校や親、地域がそれをきちんと認識して革命を起こすことがいかに緊急で大事な課題であるかを訴える。リアリティ番組はあまり見ないけれども、これはついつい毎週見てしまった(http://abc.go.com/shows/jamie-olivers-food-revolution) で、Food Revolution を見ることができます)。

2011年05月21日

戦争は企業をうるおす

ちょっと古い話になるけれど、イラク戦争が始まった頃、戦場に行くのが軍隊だけではないことを初めて知った。過剰防衛などいろいろなスキャンダルを起こした Black Water 社や施設建設、物資調達および輸送を担当した Halliburton 社など、企業が大きな位置を占めていたのだ。「戦争は経済を潤す」と言うけれども、飛行機や戦車や軍備を製造する会社だけでなく、もっと直接かかわる企業があるというのを、わたしはそれまで知らなかった。

Black Water は、1997年に軍隊にトレーニングを提供する会社として創立された。イラク戦争では要人の護衛、イラクで新しく結成された警備隊のトレーニングなどを担当した。イラク戦争中に過剰防衛や一般市民の殺害などが何度も問題になり、一般的に名前が知られる存在になった。創立したのは、先日のビン・ラディン殺害で有名になった Navy Seals の経験を持つエリック・プリンス。入社するには、最低4年の軍隊経験が必要とされ、年棒は軍隊で働く若い人々の4、5倍にもなる。数々の事件が明るみになり、プリンスはニュース番組で何度もインタビューされ、糾弾され、Blackwater は2009年に社名を Xe (ジーと呼ぶらしい) に変更した。先ごろ、ブッシュ政権で2001年から2005年まで司法長官を務めたジョン・アシュクロフトが重役職についたことが発表されている。また、「アラブの春」の中、緊張を高めるアラブ首長国連邦が、Xe社にガードを依頼したこともニュースになっている。

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Halliburton の主要事業は石油の掘削などであり、去年起こったメキシコ湾での原油流出事故でも関連会社として名前があがっている。第一次イラク戦争後、当時国防長官だったディック・チェイニー元副大統領は、アメリカ軍と傭兵をいかに併用するかのリサーチにHalliburton を雇用して、800万ドル余りを支払っている。その後、1995年にチェイニー自身、Halliburton の CEO となり、2000年の大統領選が始まるまでその職を務めた。退職にあたっては、巨額の退職金と株を受け取っており、その会社を第2次イラク戦争に使うのは、自分の利益を優先する行為だと批判が広まった。Halliburton は Blackwater に負けず劣らずスキャンダルが多い。http://halliburtonwatch.org/ というウェブサイトの存在を友達が教えてくれたのだが、ここにはまるでドラマのようなニュースが列記されている。2006年の会計監査で、イラクにおける2.96億ドルの支出のうち、Halliburtonに対する支払いは1.63億ドル、55%余にのぼったことが明らかにされた。一社がこれほどの割合を占めるのは例外的だと結論付けられている。そんな中、Halliburton は本社をテキサス州からアラブ首長国連邦のデュバイに移している。典型的な税金逃れの方法である。これまで政府の事業で巨大な利益を上げてきた企業の、あからさまな税金逃れに、批判が集中した。同じく2008年、60億ドルの天然ガス施設の落札に際して、ナイジェリア政府係官に1.82億ドルの賄賂を支払ったことを元幹部が認めた。これに関し、Halliburton は5.79億ドルの罰金をアメリカ政府に支払っている。2010年には、ナイジェリア政府が1.8億ドルの贈賄容疑でチェイニーを起訴すると発表した。これは、起訴される直前に、ブッシュ前大統領 (父親) とブッシュ政権で国務長官を務めたジェームズ・ベーカーがナイジェリア政府にかけあって阻止したと言われる。

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政治と企業というのは切っても切れないものだというのはわかっているけれど、ここまであからさまに企業と癒着した政治が8年も続いたことが、そして、ここまで明らかにされていながら、誰もその責任を問われていないことが信じられない。チェイニーはよくスターウォーズのダースベーダーにたとえられるのだけれど、微笑んでいてもどこか恐ろしいチェイニーを見て、うなってしまう。

2011年04月17日

Extreme Couponing

クーポンの活用法というのはいろんなメディアで取り上げられてきたけれども、これが最近加熱しているらしく、Extreme Couponing というテレビ番組が始まった。ごく一般の人々がいかにクーポンで節約しているかを見せるだけの番組なのだけれど、節約のレベルが想像を超えている。700ドルの買い物をして、実際に支払ったのが6ドルとか、1100ドル分の買い物で40ドルとか、そういったレベルなのだ。

毎朝、近所を2時間歩いていらない新聞をもらい集めたり、ウェブサービスを使うなどして入手したクーポンを、5時間も6時間もかけて切り取る。そのあと、スーパーの広告と照らし合わせて、手持ちのクーポンの中でセールになっているもの、クーポンの額が倍になるダブル・クーポン、2つ買ったらひとつただになるセールなどの情報をまとめて、何をいくつ買うかといった詳細なリストを作る。合計がだいたいいくらになるかまできちんと計算するのだ。こういった作業だけでも丸1日かかるという。

そうしてスーパーにでかけると、パスタを20箱、パスタソースを50びん、制汗剤40本といった、通常では考えられない買い方をする。日本のスーパーで見られるカートの4倍はある大きなカートに山盛り3台も4台もの量を買っている。スーパーの店員さんに手伝ってもらって何台ものカートをレジに持っていってからがクライマックスだ。買った個数を再度確認するため、同じ商品をまとめて数えながらレジにのせていく。100ドル、200ドル、500ドルとどんどん合計が増えていき、すべての商品がレジに打ち込まれたら、クーポンの出番。整然とバインダーにおさめられたクーポンが順番にわたされる。合計がどんどん減っていって、最後に一桁になるのだ。見ていて唖然とする。

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家に帰ると、地下室やガレージにぎっしりと棚が作られていて、そこに石鹸200個、洗剤70本、シリアル60箱、トイレットペーパー450個、ペーパータオル250個など、一般の家庭とは思えないものすごい量の買い置きがある。またまた唖然とする。同じ種類のものばかり、賞味期限が切れる前に、こんなに消費できるものなんだろうか。温度の差が激しいガレージで保存するのは、いくらびん詰や缶詰でも大丈夫なんだろうか。

「夫が減給されてやむを得ず」とか、「学生ローンや住宅ローンで家計が苦しくて、気がついたらクレジットカードの毎月の支払額が巨大に膨らんでいた」とか、一様に経済的にやむを得ず始めたといい、自分たちで消費しきれない分は教会などで寄付をしているともいう。

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「すごいなあ、これはものすごくいいボランティアかもしれない。いっぱい入手した食品をフードバンクに持っていくっていうの、やってみたら?」という夫を横目に見て思う。同じクーポンを複数一度に使えるとは知らなかったし、なるほどと思うことはいくつかある。だけど、毎週丸一日をクーポン切りに、半日を買い物に費やすことはできない。セールの商品にさらにクーポンを使うタフさがわたしにあるだろうか。お店の人にカートを押してほしいと頼むことができるだろうか。そういったことをクリアしたとしても、ずぼらなわたしは、確実に期限切れ食品の山に囲まれ、いまさら寄付もできず、捨てることにも罪悪感を感じて、呆然とするだろう。そういったことを考えるうち、きっとクーポンに「お一人様1枚まで」という制限がつき始めて、わたしは波に乗りたくても乗り遅れてしまうのかもしれない。

2011年03月20日

You are in my prayers

次々と入ってくるニュースや映像に愕然と見入る。言葉を失うとはこういうことなのかと思う。ニュースで「この地震が日本経済にどんな影響を与えるか、それが世界経済にどう影響するか」討論しているのを聞いて、「世界経済どころじゃない!」と怒る。こんなに離れたところにいることが申し訳なく、いったい何をしたら一番役に立てるのかと考えて焦る。同時に、テレビ、ラジオを通して、日本という国が勝ち取った評判を改めて感じた。

地震直後のニュースでは、日本の地震予知システムを紹介し、この地震が起こる数分前に予知され、ただちにその情報が送られ、多くの工場のシステムが即座に、地震が起こる前に停止されたことが紹介されていた。CNNではキャスターが神戸の町を歩き、いかに見事に再建されているかを紹介し、ハリケーン・カタリナで破壊されたニューオリンズの再建の遅れと比較する。建物や街づくりに耐震構造が普及していて、多くの高層ビルも地震に持ちこたえたこと、ニューオリンズなどで見られた強奪や暴力が、日本では一切見られないことなど、地震だけでなく、日本という国について、いろいろ紹介、論議されている。

先週いっぱい、アメリカでは福島の第一原発のニュースが連日、非常にスキャンダラスに取り上げられ、アメリカ全体がちょっとしたパニックに陥っていた。西海岸では、放射能が太平洋を越えて届くことを懸念して、ヨウ素剤が売り切れた。オバマ大統領が「日本における原発事故によってアメリカに危険なレベルの放射能が届くことはありえない」と会見しても、メディアは日本政府が情報を制限していると言い、事態は日本で伝えられているよりずっと深刻だとあおる。先月、アメリカのジャーナリズムの衰退を取り上げたわたしも、かなり影響を受けてしまい、日本の知り合いに「大丈夫か」と連絡を取り迷惑をかけたことを今は反省している。福島に住む知人にも「うちはたしかにそこここ壊れましたが、次の日から仕事に戻っています」といわれた。家族と電話で話していて、日本ではみんなもっとずっと冷静なのだと気がついた。日本はもうすでに前を向いて歩き始めたのだ。

先週いっぱい、夫の家族や親戚、友達や昔の同僚、ご近所など、アメリカとイギリス、そしてアフリカや韓国からも数知れず電話やメールをもらった。メールをやりとりするだけでまだ直接会ったことのない、キプロスに住む夫のいとこが、アルメニア人の慈善団体が世界各地で募金を始めたこと、自分のフェースブックのページにその団体へのリンクを入れたことを連絡してくれた。ロシアから移住したという郵便配達のおじさんも「家族や友達は大丈夫か」と聞いてくれる。結婚式をあげたアルメニア正教会の牧師さんから電話が入る。たまたま電話をかけた会社で話したウェールズ出身のカナダ人がわたしの英語のなまりを聞きつけて「もしかして日本人か。家族や友達は大丈夫か」と聞いてくれる。そしてみんなが You and people in Japan are in my prayers という。世界中できっと私たちが思うよりずっと多くの人々が日本のために祈りをささげてくれているのだろう。すでに前を向いて進み始めた日本の人々に、日本に対するエールが世界中から送られていることをぜひ知ってほしい。これから厳しい状況にたくさんぶつかっても、そういった祈りが背中を押してくれることを切に願う。

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2011年02月20日

ジャーナリストの苦悩

アメリカのジャーナリズムが自由経済にのっとられて、公正な立場から報道することができないと言われるようになって久しい。ABCのピーター・ジェニングス、NBCのトム・ブロコー、CBSのダン・ラザーなど、何十年も夕方のニュースを占めていた硬派のジャーナリストですら、イラク開戦のころ、政府に随従した報道を反省していた。そのベテランもいっせいに姿を消して久しい。

ABCはディズニー、NBCはGE (General Electric)、CBSはViacomが所有する。Viacomはパラマウントなどの映画会社やMTVなどのケーブル局を所有する会社である。各局とも、親会社のイメージや、経営状況を左右する番組のスポンサーの顔色を気にして、リベラルな内容を避けていると言われる。

ダン・ラザーは、5年ほど前、ジョージ・ブッシュはベトナム戦争への召集を避けるために親のコネで入り、そのNational Guardでも規定の義務を果たしていなかったというニュースを伝えた際、その根拠となった書類の真否に疑問が上げられ、そのためにプロデューサーが解雇されたとき、引退を余儀なくされた。書類が偽物だと証明されたわけでもないのに、ケネディ暗殺からずっとCBSニュースの顔であったラザーを失うことをCBSは選んだわけである。こうして、今はリベラルなニュースを流すのはMSNBCやCNN、HBOなど、有料のケーブル局のみである。そういったニュースですら、ジェニングス、ブロコー、ラザーのように、本人がニュースの現場から中継で生で伝えるというニュースの形はなかなか見られない。たとえば、エジプトのデモを伝えるにしても、初めのころは、局の特派員でもない、身分も明らかにされない記者からの中継であったり、YouTubeの画像だったりした。専門家といわれる人たちが集まって、その画像をもとに推測を議論しているだけで、語っている内容の正確さすら疑わしかった。

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一方、古くからの硬派のジャーナリストも悠々と定年後を楽しんでいるわけではない。ABCで夜のニュース番組を持っていたテッド・コッペルは、BBCアメリカ版ニュースにたびたび登場するし、ダン・ラザーは小さなケーブル局、HDNetでDan Rather Reports (http://www.hd.net/programs/danrather/) という週一回の番組を持っている。この番組は、他の局では扱いそうにない内容が満載。失業率9%を下らないアメリカで、農園や造園業者は特別枠の労働ビザを使って中南米やアフリカなどから労働者を雇う。そして、そういった労働者と同じ賃金でかまわないというアメリカ人をいろいろな理由をつけて追い返している。そういった内容を伝え、その特別枠の労働ビザを申請している業者のデータベースをウェブサイトで公表している。数年前、製薬会社や医療機器企業の医者に対する金銭、高額な贈り物、高級レストランでの接待などを規制する法律が成立して以来、製薬会社は「オピニオン・リーダー」という名のもとに、自社の薬に関する臨床研究を医者に発表させ、それに対して報酬を支払っている。これに対しても製薬会社からそうした報酬を受け取っている医者のデータベースがHDNetのウェブサイトで公開されている。80歳のダン・ラザーが、自分の信じる報道ができる場所を見つけた感じである。

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先日、ニュース中心のMSNBCというケーブル局で超リベラルなニュース番組を持っていたキース・オーバーマンというキャスターが突然番組を降りた。大変な人気のキャスターであったため、今後どの局に移るのかが注目されていたところ、元副大統領アル・ゴアが設立したカレントTVに移ると発表があった。中国と北朝鮮の国境で逮捕され、投獄された二人の女性レポーターが働いていた、かなり危ない地域からレポートしている極小局である。ケーブルでないと見られない局にやる気のあるキャスターが移っていくのは残念ではあるけれども、今はそうした小さい局がアメリカのジャーナリズムを支えているみたいである。

2011年01月23日

寒い夜には

日本やヨーロッパと同様、ボストンも今年は雪が多く寒い。先週は大雪が2度、今週もまたあるらしい。週末から月曜にかけての最高気温は-5度から-11度、最低気温は-21度という、信じられない寒さ。ばかでかい除雪機と奮闘してドライブウェイの雪を片付けたあとの筋肉痛とセントラル・ヒーティングではあたたまりきらない冷えに、あったかいお風呂が恋しくなる。

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我が家にはバスルームが二つあるけれども、マスターバスと呼ばれる、寝室に隣接したバスルームにはバスタブがない。まだこちらに来たばかりのころ、在住15年の日本人男性が「日本人は成功したら家にヒノキ風呂をつくるのよ」と言っていた。そうだろうなあ。あの「Sayuri, Memoirs of a Geisha」が大々的なベストセラーになったアーサー・ゴールデンの家が雑誌で紹介されていたのを見たことがある。全体的に木を基調とした日本的な造りで、木の自然の色を活かした広々としたウォークインクローゼットの向こうに、巨大なヒノキぶろがあったっけ。

我が家のマスターバスにも、小さくてもいいから、深いバスタブを入れたいと思って、ネットで探し回ったのだけれども、どんなに小さいものでも、ドアを通して入れることができない。おまけに洗い場を作るスペースもない。大々的な改装を覚悟しなければ無理だという結論に達して、そのままになっている。

景気がよかった頃は、どこの家も競って巨大なジャグジーをマスターバスに設置していた。ミストシャワーも話題になった。ただ、こちらのバスルームというのは、湿気を室内に閉じ込めるといった日本のお風呂場のようなつくりにはなってはいない。ごくふつうの部屋である。ジャグジーにお湯をたっぷり張っても部屋全体が温まるまでには時間がかかる。ミストシャワーを設置するには、まずシャワーのブースを完全密閉する必要がある。どっちにしても、ふつうの部屋にカビが生えないように、使った後、換気扇で湿気を出すのも大変なことだと思う。そこまでして、日常的に使っている人がいるんだろうか。

こうして、寒さの厳しい夜は、薪ストーブの前で、湯たんぽをかかえて日本のお風呂を夢見ているのだ。

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<プロフィール>
Chiharu Kaprielian
(チハル・キャプリアリアン)
1994年ボストン大学卒 (異文化間コミュニケーション修士号)。 ボストンに本社をおく翻訳会社でアジア言語およびメディカル系 翻訳グループのマネージメントなどを10年間手がける。 その後、サン・フレアの現地サポートを経て、ソフトウェア会社で 代理店管理を取り扱う。現在はイギリス人の夫とともに、 マサチューセッツ州に在住。食べること、読書が何より楽しみ。 名古屋うまれ名古屋育ち、名古屋弁上級者。